「弥太郎笠」や「父子鷹」の作者、というより「座頭市」の生みの親として知られる、子母沢寛(しもざわかん:1892~1968年)は、昭和41年11月、妻・たまを喪ったとき、
かっとむいた眼から、滝のように涙を流し続け、はては涙も涸れつくして、ただ、喉の奥から嗚咽の声をもらすのみといった状態で悲しんだが、それ以来、めっきり弱った。
翌々年の昭和43年7月19日、心筋梗塞で死んだ。
子息の梅谷竜一は語る。
「父の死んだことは、母のそばへ行くことで、父にとっては、それがかえって楽しみだったんじゃないかと思っています」
なお、有名な「座頭市物語」は四百字原稿にして、十五、六枚の短編に過ぎない。
以上は、昨年11月24日掲載「私がおすすめの書籍二冊」の一冊、「人間臨終図鑑」の一編(子母沢寛)から抜粋したものです。
「座頭市物語」は名優、勝新太郎主演で、映画、TVドラマでシリーズ化され、大ヒットしました。子母沢寛は、 “あの世” の存在を信じていたことが伺えます。
それにしても、妻の死を嘆きすぎるのは体に良くないことが伝わります。私も参考にしたいと思います。